バックグラウンド : Windows SharePoint Services でのサービス エンティティ
このトピックでは、Windows SharePoint Services 3.0 のサービス エンティティについて説明します。これらのエンティティは、Windows SharePoint Services オブジェクト モデルのサービス階層の上位クラスによってモデル化されます。Windows SharePoint Services 展開の物理的エンティティおよびコンテンツ エンティティに関する基礎的な情報については、「バックグラウンド : Windows SharePoint Services の物理オブジェクト」および「バックグラウンド : Windows SharePoint Services のコンテンツ エンティティ」を参照してください。
アプリケーションとサービス
ソフトウェアにおいて、「アプリケーション」と「サービス」という用語にはさまざまな意味があります。ただし、アプリケーションは、UI と多様な機能を含む大きなプログラムという意味で使用されることがほとんどです。これらの機能に共通する特徴は、通常、「ワープロ」や「スプレッドシート分析」といった広い意味を持つ言い回しでのみ表現されます。また、アプリケーションにはエンドツーエンドのさまざまな機能が用意されています。たとえば、ワープロでは、空のページに一連の下書きを記述したり、書式を設定したり、グラフィックを挿入することができます。また、レビューを管理したり、最終ファイルを XPS ドキュメントなどで発行することができます。スプレッドシート アプリケーションでは、数学関数を含む構造にデータを挿入してから、最終的なレポートを発行するまでのすべての段階がサポートされています。
一方、サービスが提供する機能の範囲は非常に狭く、通常は有益なエンドツーエンド機能は含まれていません。ただし、サービスが提供する機能は、さまざまなアプリケーションのコンポーネント パートとしては有益です。通常、サービスは目に見えない形で実行されます。またサービスには UI がほとんど含まれていないか、まったく含まれていません。サービスは、アプリケーションによって呼び出されるまで、メモリ内で待機します。Windows の印刷スプーラは、ファイルを印刷する必要があるアプリケーションによって呼び出されるサービスの一例です。
Windows サービスは、オペレーティング システムによってホストされるサービスであり、ローカルで実行されるアプリケーションで使用できます。Webサービスは、ネットワーク サーバー上でホストされるサービスであり、ブラウザなど、リモート クライアント上で実行されるアプリケーションでアクセスできます。
Windows SharePoint Services のサービス
Windows SharePoint Services には、複数の Windows サービスおよび Web サービスが含まれています。
**Web サービス **
コンテンツの発行 このサービスによって、データと Web ページがブラウザで使用できるようになります。このサービスは、フロントエンド サーバー上で実行され、Windows SharePoint Services の最も重要なサービスです。フロントエンド サーバーの詳細については、「バックグラウンド : Windows SharePoint Services の物理オブジェクト」を参照してください。
注意
Windows SharePoint Services サービスの名前は「Windows SharePoint Services」から始まり、その後にそのサービスによって提供される事柄の名前が続きます。たとえば、「Windows SharePoint Services データベース」や「Windows SharePoint Services Web アプリケーション」というサービスがあります。ただし、前者自体はデータベースではないことに注意してください。これは、データベース アクセスを提供するサービスです。同様に、後者のサービスは Web アプリケーションではなく、Web アプリケーションのコンテンツを発行するサービスです。
サーバーの全体管理 サーバーの全体管理のコンテンツは独自の Web アプリケーションであり、独自のプロセスとセキュリティ ポリシーを格納することができます。Web アプリケーションの詳細については、「バックグラウンド : Windows SharePoint Services のコンテンツ エンティティ」を参照してください。また、この Web アプリケーションも独自の Web サービスによってサポートされます。通常、このサービスは、シングル サーバー展開のフロントエンド サーバーでのみ実行されます。他の展開では、唯一のアプリケーション サーバーで実行されます。アプリケーション サーバーの詳細については、「バックグラウンド : Windows SharePoint Services の物理オブジェクト」を参照してください。
Windows サービス これらのサービスは、サーバーの [コントロール パネル] にある [サービス] のリストに表示されます。これらのサービスは Windows SharePoint Services の UI に表示され、Windows SharePoint Services のオブジェクト モデルを使用しているため、管理者と開発者は、 [コントロール パネル] を使用することなく、これらのサービスを開始、停止、および管理することができます。
管理 ファーム展開では、この特殊なサービスは、すべてのフロントエンド サーバーおよびファーム内のアプリケーション サーバーの管理者の代わりに特権操作を実行する際に、Windows SharePoint Services によって使用されます。
タイマ 管理者は、このサービスを使用して、ジョブが特定の時間に実行されるように設定することができます。このサービスは、すべてのフロントエンド サーバーおよびアプリケーション サーバーで実行されます。
検索 このサービスを使用すると、Windows SharePoint Services 展開内のコンテンツを検索することができます。マルチ サーバー ファームでは、このサービスは 1 台または複数のアプリケーション サーバーで実行されます。
データベース これは、実際にはインストール済みの SQL Server Windows サービスのラッパーの一種です。このサービスを使用すると、Windows SharePoint Services オブジェクトがコンテンツ データベースおよび構成データベースにアクセスできるようになります。マルチサーバー Windows SharePoint Services 展開では、通常、データベースをホストするサーバーが、このサービスを実行する唯一のサーバーになります。
また、Windows SharePoint Services には、Windows サービスや Web サービスのカテゴリに当てはまらない次の 3 つのサービスが用意されています。
すべてのフロントエンド サーバーおよびアプリケーション サーバーで実行される診断サービス
通常は唯一のアプリケーション サーバーで実行される受信メール サービス
通常は唯一のアプリケーション サーバーで実行される送信メール サービス
これら 3 つのサービスでは、主に構成設定が保持されます。
Windows サービスと Web サービスは新規に作成できます。たとえば、ドキュメントをスキャンしてウイルスを検索する Windows サービスを Windows SharePoint Services の展開に追加すると効果的です。(Windows サービスの展開の詳細については、「Services」を参照してください)。
各サービスは、SPService から派生したクラスによってモデル化されます。また、指定されたサーバー上のサービスの各インスタンスは、SPServiceInstance から派生したクラスによってモデル化されます。
展開例
次に、Windows SharePoint Services 3.0 展開の具体例をいくつか示します。最初に、図 1 に、Windows SharePoint Services 3.0 が 1 台のサーバーにインストールされた直後の Windows SharePoint Services オブジェクト モデル階層における主なオブジェクトを示します。
図 1. 新しいシングル サーバー展開におけるサービス、サービス インスタンス、および Web アプリケーション
図 2 には、10 台のサーバーを含むサーバー ファームのサービスおよびサービス インスタンスを示します。この例では、次の点に注意してください。
透明の長方形はサービスを表しています。これらのサービスは、Windows SharePoint Services オブジェクト モデルで SP*Service クラスと共にモデル化されます。
より小さな塗りつぶされた長方形は、Windows SharePoint Services オブジェクト モデルで SP*ServiceInstance クラスと共にモデル化されたサービスのインスタンスを表しています。
診断サービスのインスタンスは、専用のデータベース サーバーを除くすべてのサーバーで実行されます。ただし、オブジェクト モデルには SPDiagnosticServiceInstance クラスはありません。これは、Windows SharePoint Services 3.0 にはこのクラスが必要ないためです。このため、これらのインスタンスを示す塗りつぶされた長方形はありません。
管理、タイマ、および診断の各サービスは、専用のデータベース サーバーを除くすべてのサーバーで、必要に応じて実行されます。
Web アプリケーション サービスは、5 台のフロントエンド サーバーでのみ実行されます。
この仮のサーバー ファームには中程度の量のコンテンツが含まれており、集中的な検索が必要です。このため、3 台のアプリケーション サーバーで検索サービスが実行されます。各検索サーバーでは、ファーム内のコンテンツの異なるサブセットがクロールされインデックスが配置されます。
4 台目の多目的なアプリケーション サーバーでは、サーバーの全体管理サービスおよびメール サービスが実行されます。
この例のように、Windows SharePoint Services のデータベースが専用サーバー上にある場合、Windows SharePoint Services をその専用サーバーにインストールする必要はありません。データベース サービスは、データベース サーバーで実行される SQL Server サービスのラッパーに過ぎません。このため、Windows SharePoint Services コードは専用データベース サーバー上では実行されません。図にはサービスとそのインスタンスが表示されていますが、これはこれらが SPDatabaseService および SPDatabaseServiceInstance の各クラスと共にオブジェクト モデルに示されているためです。
図 2. 10 台のサーバーを含むサーバー ファームのサービスとサービス インスタンス
See Also
参照
概念
サーバーとサイトのアーキテクチャ : オブジェクト モデルの概要
Working with List Objects and Collections (英語)
概要 : オブジェクト モデルを使用して管理をカスタマイズする
Windows SharePoint Services のコンテンツ階層
バックグラウンド : Windows SharePoint Services のコンテンツ エンティティ
Windows SharePoint Services の物理オブジェクト階層
バックグラウンド : Windows SharePoint Services の物理オブジェクト
Windows SharePoint Services のサービス階層