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クエリ操作での型の関係 (Visual Basic)

更新 : 2007 年 11 月

統合言語クエリ (LINQ: Language-Integrated Query) クエリ操作で使用される変数は、厳密に型指定されていて、相互に互換性を持つ必要があります。厳密な型指定は、データ ソース、クエリ自体、およびクエリの実行で使用されます。次の図は、LINQ クエリの説明で使用される用語を示しています。クエリの各部分の詳細については、「基本的なクエリ操作 (Visual Basic)」を参照してください。

LINQ クエリの各部分
要素が強調表示された擬似コード クエリ。

クエリの範囲変数の型には、データ ソース内の要素の型との互換性が必要です。クエリ変数の型には、Select 句で定義されるシーケンス要素との互換性が必要です。さらに、シーケンス要素の型には、クエリを実行する For Each ステートメントで使用されているループ制御変数の型との互換性が必要です。この厳密な型指定により、コンパイル時に型のエラーを特定しやすくなります。

Visual Basic 2008 では、暗黙の型指定とも呼ばれるローカル型の推論が実装され、厳密な型指定を行いやすくなっています。この機能は、前の例で使用されているほか、LINQ のサンプルおよびドキュメント全体にわたって使用されています。Visual Basic では、単に As 句のない Dim ステートメントを使用することで、ローカル型の推論を適用させることができます。次の例では、city は文字列として厳密に型指定されます。

Dim city = "Seattle"
Bb384935.alert_note(ja-jp,VS.90).gifメモ :

ローカル型の推論は、Option Infer が On に設定されているときにのみ機能します。詳細については、「Option Infer ステートメント」を参照してください。

ただし、クエリでローカル型の推論を使用しても、データ ソース内の変数、クエリ変数、およびクエリの実行ループの間に同様の型の関係が存在します。これらの型の関係の基本を理解しておくと、LINQ クエリを記述したり、このドキュメント内のサンプルやコード例を操作したりする場合に役立ちます。

ソース データの要素全体を返すクエリ

次の例は、ソース データから選択された要素のシーケンスを返す LINQ クエリ操作を示しています。ソースの names には文字列の配列が含まれ、クエリ出力は、文字 M から始まる文字列を含むシーケンスです。

Dim names = New String() {"John", "Rick", "Maggie", "Mary"}
Dim mNames = From name In names _
             Where name.IndexOf("M") = 0 _
             Select name

For Each nm In mNames
    Console.WriteLine(nm)
Next

これは次のコードと同等ですが、より短く、簡単に記述できます。Visual Basic では、ローカル型の推論に依存するスタイルでクエリを記述することをお勧めします。

Dim names2() As String = {"John", "Rick", "Maggie", "Mary"}
Dim mNames2 As IEnumerable(Of String) = _
    From name As String In names _
    Where name.IndexOf("M") = 0 _
    Select name

For Each nm As String In mNames
    Console.WriteLine(nm)
Next

型が暗黙的に決定されるか、または明示的に決定されるかに関係なく、前の両方のコード例には、次のような関係が存在します。

  1. データ ソース names の要素の型は、クエリの範囲変数 name の型です。

  2. 選択されたオブジェクト name の型によって、クエリ変数 mNames の型が決まります。この場合、name は文字列なので、クエリ変数は Visual Basic の IEnumerable(Of String) になります。

  3. mNames で定義されるクエリは、For Each ループで実行されます。ループによってクエリの実行結果が反復処理されます。mNames は、実行されると文字列のシーケンスを返すので、ループの反復変数 nm も文字列です。

選択した要素から 1 つのフィールドを返すクエリ

次の例は、データ ソースから選択された各要素の一部分のみを含むシーケンスを返す LINQ to SQL クエリ操作を示しています。このクエリは、データ ソースとして Customer オブジェクトのコレクションを受け取り、Name プロパティだけを結果に投影します。顧客名は文字列なので、このクエリは文字列のシーケンスを出力として生成します。

' Method GetTable returns a table of Customer objects.
Dim customers = db.GetTable(Of Customer)()
Dim custNames = From cust In customers _
                Where cust.City = "London" _
                Select cust.Name

For Each custName In custNames
    Console.WriteLine(custName)
Next

変数間の関係は、より単純な最初の例の関係と同様です。

  1. データ ソース customers の要素の型は、クエリの範囲変数 cust の型です。この例では Customer 型です。

  2. Select ステートメントは、オブジェクト全体ではなく、各 Customer オブジェクトの Name プロパティを返します。Name は文字列なので、ここでもクエリ変数 custNames は IEnumerable(Of String) になり、Customer にはなりません。

  3. custNames は文字列のシーケンスを表すので、For Each ループの反復変数 custName も文字列にする必要があります。

ローカル型の推論を使用しない場合、前の例は次のように記述できますが、作成するのも理解するのも面倒になります。

' Method GetTable returns a table of Customer objects.
 Dim customers As Table(Of Customer) = db.GetTable(Of Customer)()
 Dim custNames As IEnumerable(Of String) = _
     From cust As Customer In customers _
     Where cust.City = "London" _
     Select cust.Name

 For Each custName As String In custNames
     Console.WriteLine(custName)
 Next

匿名型を必要とするクエリ

次の例は、より複雑な状況を示しています。前の例では、すべての変数に明示的に型を指定するのは面倒でも、不可能ではありませんでした。この例では、それができません。このクエリの Select 句は、データ ソースから Customer 要素全体を選択したり、各要素から単一のフィールドを選択したりする代わりに、元の Customer オブジェクトの 2 つのプロパティ、Name と City を返します。Select 句に応答して、コンパイラはその 2 つのプロパティを含む匿名型を定義します。For Each ループで nameCityQuery を実行すると、新しい匿名型のインスタンスのコレクションが返されます。匿名型には使用できる名前がないため、nameCityQuery または custInfo の型を明示的に指定することはできません。つまり、匿名型の場合、IEnumerable(Of String) の String の代わりに使用できる型名がありません。詳細については、「匿名型」を参照してください。

' Method GetTable returns a table of Customer objects.
Dim customers = db.GetTable(Of Customer)()
Dim nameCityQuery = From cust In customers _
                    Where cust.City = "London" _
                    Select cust.Name, cust.City

For Each custInfo In nameCityQuery
    Console.WriteLine(custInfo.Name)
Next

この例では、すべての変数に明示的に型を指定することはできませんが、関係は同じです。

  1. データ ソース内の要素の型は、ここでも、クエリの範囲変数の型です。この例では、cust は Customer のインスタンスです。

  2. Select ステートメントによって匿名型が生成されるため、クエリ変数 nameCityQuery は、匿名型として暗黙的に型指定する必要があります。匿名型には使用できる名前がないため、明示的に指定することはできません。

  3. For Each ループの反復変数の型は、手順 2. で作成された匿名型です。この型には使用できる名前がないため、ループの反復変数の型は暗黙的に決定される必要があります。

参照

概念

匿名型

ローカル型の推論

Visual Basic における LINQ の概要

その他の技術情報

Visual Basic の LINQ の概要

LINQ (Visual Basic)

クエリ (Visual Basic)